新型コロナウイルスの感染拡大で、葬儀の様式が変わり始めている。「3密」を避けるために少人数で営んだり、通夜を行わない「一日葬」にしたりと、小規模化や簡素化の傾向が目立つ。
葬儀会社側は、家族葬専用の斎場を増やすなど対応に追われている。
コロナ禍前の同社の葬儀は一般葬が7割で、家族葬は3割ほどだったが、この2年で逆転した。
感染拡大を懸念し、大規模な葬儀を避ける顧客心理が働いているとみられ、同社は3年以内に県内で30店舗のタクセルをオープンさせる予定だ。
近年は宗教意識の希薄化や近所づきあいの減少により、一日葬や、火葬だけの葬儀も増えつつある。
これが小規模化と重なり、葬儀の単価を押し下げており、県内の葬儀社21社で組織する県葬祭事業協同組合の味村勝弘理事長(56)は「料理や返礼品、花などが必要なくなり、価格競争が激しくなってくる」と懸念する。
業者も他社との差別化に取り組みだしている。宇都宮市の冠婚葬祭互助事業会社「北関東互助センター」は3月、家族葬専用会場「とわノイエ越戸」(同市越戸)の開場に合わせて無料会員制度を始めた。
会員になると本人のほか、配偶者や祖父母、兄弟姉妹など2親等以内の葬儀が5万円割り引かれる特典がある。
多くの葬儀社では事前に一定額の掛け金を積み立てると、2親等などの葬儀の際に割引を受けられる「互助会」制度が一般的だが、会費を無料にすることで他社からの乗り換えを狙う。
同社によると、3月末時点で154人が登録し、顧客の評判も上々という。
感染者遺体との別れ「場提供したいが…」 斎場やむなく慎重姿勢県内では、新型コロナウイルスで亡くなった場合、遺族と対面できずに故人が火葬されるケースが大半になっている。
2020年3月にコメディアンの志村けんさんが新型コロナで亡くなった時に、感染リスクから遺族が対面できず話題となった。国が同年作成した指針では、遺体を納体袋に入れるなどの対応をとった上で、透明な袋越しなどで別れを行うよう推奨している。
しかし、県葬祭事業協同組合によると、県内の多くの葬儀業者が依然、対面に慎重で、遺族が対面できないまま遺体を火葬することがほとんどという。同組合の味村勝弘理事長は「遺族の喪失感を和らげるためにも別れの場を提供したいが、慎重にならざるを得ない」と複雑な胸の内を語っている。