定年後の働き方は再雇用、転職、起業だけではない…専門家が「幸福度が高い」と勧める第4の選択肢

コラム

高齢者人口が増える中、既に過半数の人が70歳まで働いているという統計がある。
法政大学大学院教授の石山恒貴さんは「定年後の働き方については、
定年再雇用などの勤務継続か転職、または起業という3つの選択肢が示されてきたが、
プロジェクトごとに仕事を請け負うフリーランスも選択肢に入れていい」という。
※本稿は、石山恒貴『定年前と定年後の働き方 
サードエイジを生きる思考』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

働くか否かは自由な選択として、実際にどう働くか
シニアの自由な選択を前提としたうえで、その定年後の実態を考えてみたい。
以下に『令和4年版高齢社会白書』のデータを参照してみたい。

まず、経済的な暮らし向きについてであるが、65歳以上で「心配がない」と答えた者は
合計で68.5%である。他方、「心配である」と答えたものは31.2%である。
暮らし向きが心配である場合は、生計のために働かざるを得ない状況の人もいると考えられる。

次に実際に働いている人の割合である(図表1)。
男性が就業している割合は、60〜64歳で82.7%、65〜69歳で60.4%、70〜74歳で41.1%である。

女性の場合は、60〜64歳で60.6%、65〜69歳で40.9%、70〜74歳で25.1%である。
60歳以降も就業の割合は高く、特に男性の場合が高くなっていることがわかる。

また、「何歳頃まで働きたいか」という質問については(図表2)、「65歳くらいまで」が25.6%、
「70歳くらいまで」が21.7%、「75歳くらいまで」が11.9%、80歳くらいまでが4.8%、

「働けるうちはいつまでも」が20.6%であり、60歳以降も就業を希望する割合も高いことがわかる。

60歳以上のシニアが働くのは生きがいを求めて

『令和2年版高齢社会白書』では、シニアの経済生活の特集を組み、働き方の実態をより詳細に分析している。

★60歳以上の男女の収入のある仕事をしている人で、仕事をしている理由は、「収入がほしいから」(45.4%)、
「働くのは体によいから、老化を防ぐから」(23.5%)、「仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力を生かせるから」(21.9%)、「仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから」(4.4%)である。

つまり、収入を得る目的は一番比率が高いものの半分以下であり、
それ以外は仕事を通じて収入以外の何かを得ることを目的としている。

さらに、60歳以上の男女で生きがいを感じている比率は全体で79.6%である。
このうち、収入のある仕事をしている場合は85.0%、していない場合は76.4%となり、
収入のある仕事をしている場合のほうが比率は高い。

データからいえることは、シニアにとって収入のある仕事に従事することは、
それを希望する者も多く、収入や生きがいにつながるという点で、重要な選択肢に数えてもいいことだ。

シニアの仕事内容における選択肢を前提から見直す

シニアにとって、仕事に従事することを選択肢にくわえることまでは誰にも異論はないだろう。
では、その仕事の中には、どんな選択肢があるのだろうか。
従来、定年後の仕事の主な選択肢は3種類だと考えられていたと思われる。
第1が今の組織での現職継続、第2が転職、第3が起業である。
しかし筆者はこの3種類の分け方は従来の考え方の延長線であって、柔軟性を欠いていると考える。

定年後の仕事のあり方が小さな仕事でも大丈夫となれば、現職継続、転職、起業という3種類の選択肢が多様化する。そもそも現職継続、転職、起業という選択肢を考えた時に、無意識のうちに週5日間で、
午前9時から午後5時まで働くようなフルタイムの就業を前提としていないだろうか。
しかし小さな仕事であれば、時間や場所に縛られない柔軟な就業形態が可能であろう。
そこで、フリーランスという第4の選択肢を付け加えたい

シニアだってフリーランスで仕事を請け負える

ここで読者には疑問が湧くだろう。起業とフリーランスは何が違うのか。
そもそも、起業とフリーランスは、厳密には比較できるものではない。

起業とは新しく事業を起こすという意味であって、就業形態を説明する概念ではない。
それに対してフリーランスは就業形態のひとつである。
この点を明らかにするために、【図表3】をご覧いただきたい。

【図表】多様な働き方の全体像

この図表では、筆者がアドバイザリーボードに所属しているプロフェッショナル&
パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、フリーランス協会)が作成したものを、抜粋して簡易的に示している。

まず働き方、つまり就業形態は大きく労働者と事業者に二分される。
左側の労働者とは、雇用による働き方である。
いわゆる正社員、派遣社員、契約社員、パート・アルバイト等が該当する。
現職継続、転職という2つの選択肢を検討する時は、その前提としては雇用による働き方が中心になるだろう。

これに対し右側の事業者とは雇用によらない働き方を意味し、全般的にフリーランスという呼称にあてはまる。
図表を見てわかるとおり、フリーランスと呼ばれる就業形態の中が多様性に富んでいることがわかる。

起業とは何か事業を起こすことであるから、事業を起こした後にはこの図表の中では自営に分類されるだろう。
つまり、起業をあえて分類するなら、フリーランスの種類のひとつということになる。

https://president.jp/articles/-/70829 転用しました。

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