社会福祉協議会の仕事・役割とは? 活動内容と相談できること

コラム

社会福祉協議会」略して“社協”を知っていますか? その仕事や役割は日々、高齢者や障害のある人の困りごとや、生活困窮などの悩みごとをサポートしてくれる、地域福祉の強い味方です。「地域福祉コーディネーター」の1日に密着すると、その仕事の幅広さに驚きの連続! 知られざる社協の奥深い世界を紹介します。

「社会福祉協議会」の活動内容

日本の地域福祉の要といわれる組織「社会福祉協議会」、通称「社協」は、全国津々浦々1800以上ある、社会福祉法に規定された民間団体です。運営費は住民からの会費、寄付、自治体からの補助金などで成り立っています。

画像

社協の仕組み

その活動は実にさまざま。ボランティア活動のサポートや、住民の交流の場作り、ゴミ屋敷問題の解決、コロナ禍での生活資金の貸し付けなど、私たちが安心して暮らせる地域作りに貢献しています。

地域福祉が専門で、各地の社協の事業計画にも関わる、ルーテル学院大学名誉教授の市川一宏さんは、社協について、以下のように説明します。

地域福祉が専門で、各地の社協の事業計画にも関わる、ルーテル学院大学名誉教授の市川一宏さんは、
社協について、以下のように説明します。

画像(ルーテル学院大学名誉教授 市川一宏さん)

「社協自体は組織としてはそんなに大きくありません。地域の自治会、行政、福祉施設、教育機関や企業なども、メンバーとして一緒に取り組もうと活動しています。ネットワークの広い、みんなで地域を耕すところが社協だと理解していただければと思います」(市川さん)

地域福祉コーディネーターの1日

ありとあらゆることに通じている社協。活動内容を詳しく知るために、東京の文京区社会福祉協議会で働く中川翔太さんに密着しました。

画像(地域福祉コーディネーター 中川翔太さん)

中川さんの肩書は地域福祉コーディネーター。地域の困りごとを解決するため、行政や関係団体と住民をつなぐのが仕事です。

💡社協のお仕事
困りごと解決のため関係団体と住民をつなぐ

日々、住民からの困りごとを直接聞きに行く中川さん。欠かせないのが自転車です。

画像(中川さん)

「(自転車移動だと)例えば、町会の掲示板に貼られているものがちらっと見ることができます。あと、すれ違うときに知っている方、地域の方とお会いすることもあるので、そういったときに声もかけやすいのが自転車のメリット」(中川さん)

最初に訪ねたのは“こまじいのうち”。近所づきあいが減って困っていた地域のために作った場所です。

画像(こまじいのうち)

「地域の居場所として活動している場所。赤ちゃんから高齢者の方まで、いろんな人がふらっと立ち寄って、おしゃべりしたり交流できる場所です」(中川さん)

社協に相談したのは秋元康雄さんです。

画像

秋元康雄さん

「隣の人が何しているか分かんない時代になってるじゃん。子どもたちにちょっと声をかけても、『変なおじさんが声かけた』ってすぐ警察に通報される時代になっちゃってるし」(秋元さん)

相談を受けた社協は、交流の場を作ろうと提案しました。場所は、空き家になっていた秋元さんの持ち家を利用。
運営費は、行政からの補助金が使えるようにアドバイスし、さまざまなイベントなど、人が集まる仕掛け作りを中川さんが手伝ってきました。

画像(地域の人が集まるイベント)

💡社協のお仕事
住民と一緒に交流の場を作る

隣には子育てサロンもあり、今では、幅広い世代が集まる場になっています。

「子どもたちに声をかけても、自然に受け入れてくれる。子どもたちからも挨拶してくれる、そういう関係ができてくるわけだ。不審者がなかなか入りづらくなるわけだよね。そうすると防犯にもつながるんじゃないでしょうか」(秋元さん)

さらに、中川さんはほかの団体とつないで、地域全体を盛り上げています。

「5月から新しいプログラムをここでやりたいという団体さんからご相談を受けています。外国にルーツのある子の日本語教室をここでしたいと」(中川さん)

社協は団体だけでなく、要請があれば個人にも対応します。1人暮らしの今宮眞幸さん(77)は心臓病などの持病もあり、外出があまりできません。そこで中川さんがお手伝いのために訪問します。

画像(今宮さんの家を訪問する中川さん)

💡社協のお仕事
外出が難しい高齢者を訪問

介護を担当しているケアマネージャーから相談を受け、介護保険ではカバーできない家事や、お金の管理などを手助けしています。
さらに、近所の交流の場も紹介。今宮さんは、引きこもりがちだった生活から抜け出すことができたといいます。

💡社協のお仕事
ボランティアによる家事サポート
お金の管理サポート

地域の高齢化の問題も深刻です。築52年の都営住宅では、1人暮らしの高齢者が多いという不安を抱えています。

そこで社協が自治会に提案したのは、住民を孤立させないための交流イベント。講師を招いて体操教室やレクリエーションを企画しました。活動費は行政からの補助金を利用し、手続きなども社協がサポートしています。

画像

社協がサポートしたイベント

💡社協のお仕事
補助金の手続きをサポート

地域貢献をしたいという人を応援するのも、社協の仕事です。馬場玲子さんは、子どもたちの居場所を作りたいと、2年前、中川さんに相談しました。

画像

中川さんに相談する馬場玲子さん

「コロナ禍は、外で遊ぶ子も少なかったですし、子ども同士では、家の中では遊ばせないおうちも多くて」(馬場さん)

いちばんの課題だったスタッフ集めも中川さんがアシスト。いつも見守り役の大人がいる場所にするため、町内会や近所の人に協力を求めました。

💡社協のお仕事
町内会などに協力を求める

「近所に住んでいる方がここで何かやっているからと立ち寄って、そのままスタッフになった方もいらっしゃいます」
(中川さん)

今では、学校帰りの子どもたちが集まり、にぎやかな場所になっています。

画像(集まってきた子どもたち)

「一人の力じゃ、できなかったと思います。みんなここにゴザを敷いて、おやつを食べたりゲームやったりしてるんですよ」(馬場さん)

日々、地域を回って住民と直接向き合う。それが、社協の地域福祉コーディネーターです。

「地域の皆さんが、困ったことがあると言ってくれるときが、いちばん頼りにされている(と感じる)。コーディネーターが地域の方から頼りにされる瞬間が、いちばんうれしいかな」(中川さん)

もっと知りたい社協の仕事

社会福祉協議会には、大きく4種類の仕事があります。

①福祉に関する相談・支援
②在宅福祉サービス(介護・日常生活・金銭管理支援など)
③地域活動のサポート
④災害ボランティアセンター

ここで市川さんが、社協の仕事に関するさまざまな質問に答えます。

質問:子どもだけどボランティアをしたい。

「社会福祉協議会には、ボランティアの相談を受け止める部署もあります。ですから、子どもでもやりたいという気持ちがあったら、相談してみるといいかと思います」(市川さん)
※ボランティア体験ができる社協もあります。

画像(ボランティア体験の様子)

質問:コミュニケーションを取るのが難しい高齢者とスマホで交流したい。

「スマホ講座を開催しているのが、(茨城県)東海村社協などです。スマホを使いながら、いろんな方と知り合いになれて、孤立せずに自分のつらいことを発信できるような仕組みを勉強できます。ただ、全て社協ではなくて、例えば地域包括支援センターとか、いろんな相談先はありますから、まず声をかけていただきたい。」(市川さん)

※地域包括支援センター…高齢者の相談窓口

質問:結婚したいのでパートナーが欲しい。

「例えば長野県の須坂市社協では、結婚相談所をやっています。なぜかというと、町の人口減少対策としても大切だからです。過疎化していくと、住んでいる人がいなくなる。若者たちの婚活をサポートして、そこで家庭を築いてもらおうという取り組みをやっている自治体もあります。それぞれの自治体によって違います。社協の人数にもよるので、全国すべての社協が同じレベルで対応できるわけではありませんが、悩みがあれば気軽に相談してみるのがよいでしょう」(市川さん)

社協の災害対応の歴史

社協の仕事で重要な柱のひとつに災害ボランティアがあります。世間の関心が集まったのは28年前のこと。

1995年の阪神・淡路大震災では、神戸を中心に6000人以上が犠牲になり、60万以上の住宅が被害を受けました。
全国からやってきたボランティアは、1年でのべ137万人。この年は「ボランティア元年」と呼ばれています。

しかし、現場は大混乱でした。当時、大学生だった長谷部治さんは鹿児島から被災地に駆けつけ、最初に指示された仕事に戸惑ったといいます。

画像

長谷部治さん

「『これやってきて』と渡されたメモ用紙のようなものに、縦の棒が1本と、横の棒が2本と、神社の鳥居らしきものが書いてあって、丸が一個つけてあって、『そこに行って避難所作ってきて』と言われた。その人はそれだけ言ってどこかに行ってしまった。もう一回聞き返すことも許されないような状況で、当時はそのくらい混乱していた」(長谷部さん)

どこに行って、何をすればいいのか、誰から指示を受ければいいのか、不満を抱えるボランティアもいました。

「災害時にどんなボランティアニーズ(必要な支援)があって、どんな被災者の方たちがいて、どんなボランティアの人たちが駆けつけてくれるのか、誰も系統立てて理解しているわけではない。結果として、活動(の糸口)が何も見いだせずに終わる人もたくさんいただろうと思います」(長谷部さん)

それでも、被災地をかけずりまわった長谷部さん。この教訓をいかすため、震災の翌年に社協の職員となり、ボランティアの仕組み作りに挑んでいきました。

長谷部さんは災害が起こる度に現地に足を運び、受け入れの方法、仕事の割り振り、情報共有の仕組みなど、ボランティアがスムーズに活動できる体制作りを模索。そのなかで最も重視したのが、一人ひとりの声を聞いて必要な支援を届けることでした。

「例えば認知症があったり、心の病があったり、1人暮らしを頑張っている高齢者の方とか、心配な人はどの人で、どこにいるか、ふだんの状態も分かっている。そこは社協が頑張っていかないといけない」(長谷部さん)

さらに長谷部さんは社協の職員として、災害支援の仕組みを作る全国組織に参加。NPOや行政などと協力して確立させたのが、「災害ボランティアセンター」です。社協がボランティアのコーディネートを担います。

画像

被災地のNPOと共に話し合う長谷部さん

2011年3月11日の東日本大震災。未曽有の大災害に、全国各地の社協が設置した災害ボランティアセンターは過去最多の196か所。さらに、各都道府県の社協が地域を越えて職員を派遣しました。

全国からのべ3万人以上の職員が被災3県の社協をサポート。150万人以上の災害ボランティアが被災者のもとに駆けつけ、力を発揮することができました。

画像(東日本大震災時の社協の職員派遣状況)

28年前、神戸の被災地で無力感を味わった長谷部さんが、ボランティアコーディネートの仕組み作りを振り返ります。

「28年の歴史のなかで、より社協らしさが発揮できる時代にようやく届いてきた気はしています。全国各地すべてに事務所があって、地域福祉の仕事をしている。そういったことがやれている組織は、社協しかないと思っている。社協の横のつながりは非常に大きな意味がある」(長谷部さん)

ここで、私たちが災害ボランティアをするときの心得を紹介します。

画像

災害ボランティアの心得

・最新情報をチェック
災害ボランティアセンターのホームページで最新情報をチェックできます。

・マスク、ゴム手袋、長靴は必需品
助けに来た人がケガをしないことも、大切な心がけです。ケガなどを防ぐために、長袖・長ズボンがおすすめです。

・名札、腕章、ビブス着用
ボランティアと分かると被災した方も安心します。名札や腕章、ビブスといった、社協が貸してくれるものを着用しましょう。

・ボランティア保険(出発地の社協での加入を)
現地までの道中のけがなども補償してくれるので、出発地の社協での加入がおすすめです。

さらに市川さんは、支援が必要なのは災害直後だけではないと語ります。

「復興には時間がかかります。例えば、体育館の避難所で生活していた方が、仮設住宅に移っていく。そうすると、仮設住宅での支援が始まります。それから、環境が整った復興住宅に移り、そこでの支援もある。そこに行ったら終わりじゃなくて、何らかの継続も考えていただきたいですね」(市川さん)

社協のボランティアコーディネート

ひと口にボランティアと言っても、いろいろな種類があります。

高齢者のための食事介助・見守りなど
障害のある人のための車いす補助や手話通訳など
子ども・青少年のための野外活動やレクリエーション支援など
国際交流のための在日外国人の支援など
芸能・文化のための伝統芸能の継承
その他、環境整備や募金活動など

画像

ボランティアの種類

実際にボランティアをやりたいという時に頼りになるのが、社協の「ボランティアセンター」です。

文京区の社協で募集されているボランティア活動は、年間100件以上。ボランティア活動を希望する人のために、
希望、特技、いかせる経験などを聞き、丁寧にコーディネートしてくれます。

画像(紹介されるボランティア活動の例)

その人に適したボランティアを探す理由を担当の根本浩典さんが語ります。

画像(文教ボランティアセンター 根本浩典さん)

「日程が合わないとか、希望のものがないときに、『ボランティアはありませんね』と言うと、せっかくやりたいと思ってくれた方にとってもったいない。ですから、好きなこと、特技、趣味、そういったものをお聞きすることで、希望のボランティア活動ができるようにサポートするのが私たちの仕事です」(根本さん)

さらに、ボランティアセンターではボランティア活動の運営をしたい人の相談にのってくれます。専門的な知識を学ぶための講座や体験会も開いているのです。

画像(ボランティアセンターのサポート内容)

💡社協のお仕事
ボランティア活動の相談にのってくれる
会議室や必要な機材の貸し出し(※地域によって異なります)
講座や体験会の開催

ここで市川さんが、ボランティア活動に取り組むときの心構えを教えてくれました。

「主体的にやることがボランティア活動では大切。強制されてやるんじゃなくて、自分はこれをやりたいな、という思いを大事にする。人のためにやっていたら、自分のためでもあった。それが分かるのがボランティアの醍醐味だと思います」(市川さん)

ゲームで学ぶ“福祉”

ここで、身近な人たちと一緒にゲームをしてみましょう。その名も「なからゲーム」。ルールは簡単で、目を閉じて心の中で10秒数えるだけ。「ここで10秒だ!」と思ったところで、手を挙げます。

実際にやってみると、人によって9秒だったり17秒だったり、バラバラな結果になると思います。

「『なから』は長野弁で『だいたい』とか、『おおよそ』という意味です。当然、体調によっても違うし、それぞれの環境によっても違うから、『おおよそ』『だいたい』という見方が大事。人それぞれ違うんだ、人それぞれ持ち味もあるし、人生も違う、痛みも違う。そのことをみんなで確認するために『なから』ゲームをしました」(市川さん)

社会福祉協議会も、さまざまな人たちと共に進んでいくことを理想としています。

画像(ルーテル学院大学名誉教授 市川一宏さん)

「社会福祉法人もあれば、障害者の分野でいろいろ展開しているところもあれば、民生委員もいれば、プロもいる。そういう方たちと一緒に社協が取り組んでいく。社協だけで考えるのではなくて、地域の住民やいろんな方たちと一緒に考えていく。いろんな人と関わることによって、その人の悲しみを減らすことができる。そして、喜びを増やすことができる。そういう人間関係があるんだという地域社会を作りたいと思っています」(市川さん)

※この記事はハートネットTV 2023年6月5日・12日放送「フクチッチ 社会福祉協議会 前編・後編」を基に作成しました。情報は放送時点でのものです。

https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/849
より転用しました。

タイトルとURLをコピーしました