高齢者施設に入所したり、病院に入院したりするときは身元保証人が必要となります。
同居家族や付き合いの深い親族であれば気軽に引き受けてもらえるかもしれませんが、高齢者おひとりさまなど、身近に頼れる人がいない人にとっては、身元保証人を引き受けてくれる人を見つけるのは簡単ではありません。病院側も、高齢者本人がどこまで責任を果たせるのか不明瞭なままでは入院や入所を気軽に引き受け気軽に引き受けることができません。
だからこそ身元保証人が必要になるわけですが、今回は、身元保証を依頼する場合、もしくは引き受ける場合に知っておくべき身元保証法や民法の一部法律などについて解説します。
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身元保証法とは?
身元保証法の正式名称は、「身元保証に関する法律」といい、昭和8年(1933年)に制定された古い法律です。
本来は、雇用関係において規定された法律でした。制定当時は想定されていませんでしたが、現在では高齢者が病院に入院したり施設に入所したりする際にも身元保証人を設定することが要求されるケースが多くなってきています。
現行の身元保証法では厳密には高齢者の身元保証には対応していません。しかし、他に該当する法律がないため、高齢者の場合であっても身元保証法を一つの根拠法として、ある程度頭に入れておく必要があります。
高齢者本人の身元を保証する人を一般に「身元保証人」と呼びます。呼び方は施設によっては「身元引受人」と呼ぶケースもあり、責任の範囲はさまざまです。身元引受人と呼ぶ場合は、入院・入居していた高齢者本人が死亡した時に遺体を引き取ったり、残された本人の所有物を処分したりする役割を担うケースが多いです。
一方、「身元保証人」とする場合は、一般的に高齢者本人が入院費などの費用を支払えなかった際に肩代わりして支払うことが求められます。身元保証契約を結ぶ際には、保証の範囲を明確に理解しておくことが非常に重要です。
身元保証に関しては、民法にも関連する条文があり、2020年に改正が行われました。
次項では、2020年の改正内容を踏まえて民法上の身元保証の扱いについて説明します。
民法の身元保証に関わる部分が改定された理由
民法の債券関係(契約関係)に関わる部分が2020年4月に一部改訂され、保証について新しいルールが導入されました。
金融機関から融資を受ける際に、本人(主債務者)が返済できなくなった時やアパートの賃貸借契約で家賃を支払えなくなった時のために保証人をつけるのが保証契約です。
アパートの保証人の場合は、借金の返済の保証などとは異なり債務の範囲が不特定なため、「根保証契約(ねほしょうけいやく)」と呼ばれています。
例えばアパートの賃貸借契約の保証人となれば、借主の重過失によってアパートが全焼してしまった場合、保証人には多額の損害賠償の責任が発生します。今までは保証人は非常に大きなリスクを背負っていましたが、法律の改正により保証人の責任に制限が加えられました。その中で、高齢者の身元保証に関わる部分での変更は、主に下記の2点です。
この改正は個人が保証人になる根保証契約に適用されます。
上限額の定めがない個人根保証契約は無効
根保証契約(個人根保証契約)の場合、保証人の責任で支払う金額の上限額(極度額)を設定しなければなりません。もし、上限額なしで個人根保証契約を結んだ場合は無効となります。限度額は書面などで「〇〇円」と明確に定める必要があります。
特別な事情が生じると保証は終了
個人根保証契約は、保証人が破産した場合や本人(主債務者)、保証人が死亡した場合は、その時点で契約は打ち切りとなります。しかし保証人は、それ以前に発生した債務について、保証した内容の義務を負わなければなりません。
身元保証に関する法律の紹介
「身元保証に関する法律」(通称「身元保証法」)は、全6条の短い法律です。表記方法が古くわかりにくいため、現代語の表記に直して、法律の内容をわかりやすく解説します。
第一条
第一条の現代語訳
いわゆる身元保証契約を締結する際には、契約期間を定めていなければ契約期間は契約成立から3年間とみなします。ただし、商工業見習い者の身元保証契約については、5年間とみなします。
第一条の解説
雇用契約を結ぶ際には、もし被用者(労働者)が使用者(雇用主)に損害を与えたりした場合にその損害を賠償することを第三者が保証する契約を結べます。「商工業見習い者」は、現代における新卒採用者のことです。基本的には労働契約に関する規定ですが、これをそのまま高齢者サポートの身元保証に当てはめるとすると、身元保証契約は期間の定めがない場合の契約期間は3年となります。
第二条
第二条の現代語訳
- 身元保証契約の期間は5年を超えることはできません。もし契約で5年を超える期間が定められていたとしても無効になり、5年間とみなされます。
- 身元保証契約は更新することができます。ただし、更新時も契約期間は5年を超えることはできません。
第二条の解説
身元保証契約の期間は最大で5年。更新時も同様に最大5年です。介護施設などの入所の際に結ばれる身元保証契約も最大5年で、更新しなければ契約は自動的に失効することになります。
第三条
第三条の現代語訳
使用者(雇用主)は以下のような場合、速やかに身元保証人に通知しなければなりません。
- 被用者(労働者)に業務上の適性や誠実さを欠いているような兆候があり、これによって身元保証人に責任が発生するような恐れがあることを知った時
- 被用者(労働者)の業務内容や勤務地が変更されて、これにより身元保証人の責任が重くなったり、または監督が困難になったりする時
第三条の解説
高齢者が介護施設などへ入居する際の身元保証の場合、高齢者の身体状況が変化した時などは身元保証人に連絡しなければならないことになります。認知症が悪化して他人に危害を加える可能性が高まった場合などが該当すると考えて良いでしょう。
第四条
第四条の現代語訳
身元保証人が前条(第三条)の通知を受けた時は、将来身元保証契約の解除をすることができます。また、通知を受けなくても、身元保証人がみずから前条第一号や第二号の事実を知った場合でも同様です。
第四条の解説
高齢者の身体状況が悪化して身元保証人の責任が増加しそうな時は契約の解除が可能であると考えられます。
第五条
第五条の現代語訳
裁判所が身元保証人の損害賠償責任と賠償金額を定める際には、被用者を監督する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証を行うに至った理由と身元保証契約を結ぶ時にした注意の程度、被用者の任務内容や状況の変化などの様々な事情を考慮しなければなりません。
第五条の解説
身元保証契約を結んでいたからといって一方的に身元保証人が損害賠償を負わなければならないという訳ではありません。様々な事情を考慮したうえで、責任の程度や賠償金額が決定されます。
第六条
第六条の現代語訳
この法律の規定に反して、身元保証人に不利益になるような特別な契約を結んでもすべて無効です。
第六条の解説
身元保証契約を結ぶ場合、身元保証人が一方的に不利にならないように法律上の制限が加えられています。
終活に関する身元保証法まとめ
終活で必要となる身元保証法について解説しました。少子高齢化の進行に伴い、身寄りのない方の入院・高齢者施設への入所も増える中で、身元保証人のなり手がいないなどの新たな問題も生まれてきています。まだまだ法的な整備が不十分な状況です。ですから、身元保証人を引き受ける場合は、簡単に承諾するのではなく契約内容を事前にしっかりと把握する必要があります。
身元保証人を依頼する側も、日頃から万一の場合の身元保証をどうするかについて考えておかなければなりません。関連する法律などの知識も身に付けておけば、身元保証をお願いする側、引き受ける側の双方にとってメリットとなるでしょう。依頼された側も安心して引き受けてくれるでしょう。ただ、法律は複雑な内容が多いため、一般人が完璧な知識を身に付けることは非常に困難です。分からないことや不安なことがあれば、積極的に専門家などに相談することをおすすめします。
一般社団法人 終活協議会は、身元保証サービスを提供しており、全国20,000人以上の身元保証を代行してきた実績があります。また、サービス料金を明確に定めている為、追加費用やオプション費用が後から請求される事は一切ありません。
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より転用しました。
終活コンシェルジェ 糸数