トラブル事例から学ぶ「介護タクシー」の賢い活用法 利用者やドライバーの本音を直撃!

沖縄終活案内所

公開日:2022.10.01 / 更新日:2023.01.08 |暮らし    

 病院の送迎など、介護中の移動手段として「介護タクシー」が注目されている。
とはいえ「介護タクシーは料金が高い」という声も。介護タクシーに詳しい専門家や、
利用者の実体験やドライバーのコメントをもとに、介護タクシーの賢い活用法をリサーチした。

車いすを乗せられる介護タクシー
介護タクシーの実情について専門家や現場で働く人たちに聞いた(写真提供/佐藤創さん)

実例に学ぶ失敗しない介護タクシーの使い方

 高齢化が進み介護が必要になる人が増えていく中、移動手段のひとつとして
「介護タクシー」が注目されはじめている。

「介護タクシーの事業者の数もゆるやかに増えていますし、市区町村によっては,

高齢者にタクシー券を配布するなど、タクシー料金を助成する取り組みも始まっています」

 こう語るのは、「介護タクシー案内所」を運営する介護タクシーの専門家、滝口淳さんだ。

「上手く使うことができれば、とても便利な介護タクシーですが、
利用者とドライバーさんの間でトラブルになることもあるので注意が必要です」(滝口さん)

実際にあったトラブル事例をもとに、活用法を教えてもらった。

「介護タクシー」とは?

 一般的なタクシーと同じ『一般乗用旅客自動車運送事業』のひとつで『福祉輸送事業限定』の区分となり、国土交通省の事業許可が必要。一般的なタクシーと違って、介護タクシーは予約制なので、
事業者に直接連絡するか、病院や施設などで手配してもらう。

 乗車対象になる人は、要支援・要介護の方、障がいのある方、そのほか単独で公共交通機関が利用できない方。実際に利用できるかは各事業者の判断となる。「介護タクシー」という名称には法律上の呼び名はなく、
「ケアタクシー」「福祉タクシー」なども同じサービスとなる。

 なお、介護保険サービスとして活用する場合は、ケアプラン(※)に組み込む必要がある。

※身体介護や生活援助など、介護保険指定事業所が行う訪問介護のひとつに、「通院等乗降介助」という
サービスがある。ケアマネジャーがケアプランの中に通院等乗降介助を組み込んだ場合、
介護タクシーを介護保険で使えるようになる。

行きと帰りで介助人数が増えて料金が上がった

「介護タクシーのクレームで実際あったのが、『行きはドライバー兼介助を1人で行っていたのに、
帰りはヘルパーが1人増えて2人になっていて事前の説明もなく料金が加算された』というものです。

 階段や玄関の段差は、下りるより上がるときのほうが大変なので、利用者の安全を考えてドライバーさんが帰りは介助を1人増やそうと判断したのだと思いますが、双方が最初に情報共有しておかなかったので不信感に繋がってしまったのかもしれません。利用者さんも自宅の状況を事前にしっかりと伝えておくことが大切です」(滝口さん)

滝口淳さん
「事業者さんとのコミュニケーションが大切」と、滝口さん

もしも事故が起こったら責任問題に!?

 介護タクシーには、「介助料」という費用がかかり、ベッドなどから車いすに移動して車に乗るまでの一連の介助サービスを行う。

「たいてい介護職員初任者研修(介護の入門資格。以前はヘルパー2級という名称)の資格を持ったドライバーか、ヘルパーが同行しますが、家族が介助を手伝う場合には注意が必要です。

 階段の昇り降りなどドライバーさんと家族が共同で介助すると、万が一事故があったときに責任はどちらにあるのか、という問題が発生することも。信頼のおける事業者さんであれば、介助は知識や経験のあるプロにお任せするのがいいと思います」(滝口さん)

料金に納得がいかずトラブルになる事例も

「介護タクシーを使ったら20分ほどの距離で1万円でした。どうしてそんなに高いのか謎のままです」(50代女性)

 実際に介護タクシーを使った人の中には、介護タクシーは料金の内訳が不明瞭で、価格が高いという声も。

「介護タクシーには、一般的にメーター運賃のほかに介助料などの料金がかかりますが、事業者さんによって料金設定が違います。料金に納得がいかないから支払えないと、ドライバーさんとトラブルになった話も聞きます。最初に見積もりを取って、利用後は料金の明細をもらうようにするといいですね。

 クレームを伝えるには、その介護タクシーがグループに所属している場合はグループの窓口に、個人事業主の場合は地方運輸局の運輸支局に連絡するといいでしょう」

介護タクシーのパンフレット
パンフレットに料金を明示している事業者も

ケアマネが明かす介護タクシー利用の実情

 東京都内のケアハウスで働くケアマネジャーのSさんは、以下のように語る。

「私が働いている施設では、介護タクシーは介護保険外サービスのひとつとして区から紹介してもらうという方式をとっています。

 利用者さんは区に申請・登録して指定番号を発行してもらい、事業者さんに登録番号を伝えて予約をします。1か月前から予約ができますが、直前だと予約が一杯のことが多いですね。

 私自身、父親の介護をしていたときは、介護タクシーは使わず、個人のドライバーさんで介護の資格を持っている方に病院の送迎をお願いしていました。通常のタクシーと変わらない料金で福祉車両も予約でき、病院の待ち時間は『休憩しているから大丈夫だよ』と言ってくださって、とても助かった経験があります。

 一般のタクシーでも介護タクシーでも、こちらの事情をわかってくださって融通が利く方、料金体系がわかりやすく、介護が必要な方の移送経験や知識があるドライバーさんと出会えるのが理想ですよね」(Sさん)

ケアマネのSさん
「私自身の介護のときは一般のタクシーを使いました」と、ケアマネのSさん
介護保険外サービスのパンフレット
Sさんが働く市区町村では、介護保険外サービスの「外出支援」としてリフト付き福祉タクシーを使えるが、事前申請や予約などが必要だ

一般タクシーで介護資格を持つドライバーの声

 介護職初任者研修の資格を持つタクシードライバーの佐藤創(はじめ)さんにも話を聞いた。

「私は都内のタクシー事業所に勤務していますが、母の介護をしたときに、
介護職初任者研修を学んで資格を取りました。

 私が働いているのは、介護タクシーの事業許可は取得していない、一般的なタクシー事業所ですが、福祉車両を複数台保有しています。お客様のご要望や状況次第で、福祉車両で伺って移乗介助のお手伝いもさせていただきます。介護タクシーの事業許可がないと介助料をいただくことができないため、介助料はありません。

 ご予約いただいた場合はメーター料金のほかに、迎車料金320円、福祉車両をご希望の場合は、
車種指定料金420円が別途かかります。

 介助が必要なときは、必ずご本人や介助する方に状況を先に確認し、ケガや事故のないよう注意しながら優しく手伝いすること、明るく接することなどを心がけています。

 以前からご指名いただいていたお客様がご病気で足を悪くされた後にも使っていただいたとき、

『足の痛みもなく車に移乗できた』と喜んでくださったのは嬉しかったですね。
今も関係が続いています」(タクシードライバー・佐藤さん)

タクシードライバーのHさん
介護の資格を持つドライバーの佐藤さん。要望があればスロープで車いすを乗せられる福祉車両を活用している(写真提供本人)

タクシー業界はサービス競争も

 大手タクシー会社でもドライバーは介助の講習を受けるなどの取り組みも進んでいて、
介護タクシーのほかにも選択肢は広がっている。

「都内では日本交通が『サポートタクシー』、国際自動車・京王自動車は『サポートキャブ』といって、サポートが必要な方のためのサービスを打ち出しているところもありますし、
運送会社が介護タクシー事業を始めるなど、別の業態からの参入もけっこうあります。

 また、介護タクシーでの送迎だけでなく、帰りに庭の草むしりをしたり、
電球を変えたりといった家事代行サービスを組み込んでいるところもあります。

 介護タクシーは一般的なタクシーより利用料金は高くなるため、特別な日だけ利用するという人もいます。朝は病院に行って、昼ご飯を挟んで、午後は買い物に行ったり、食事の時間には食事介助をしてもらったり、家族の介護に深くかかわっているドライバーさんもいらっしゃいます。
今後、介護タクシーを多くの方に知ってもらうことで、サービスのクオリティーや多様性が高まっていくと思います」(滝口さん)

 介護には便利なタクシーを賢く活用して、安心して快適に移動できるのが一番だ。

引用元:介護ポストセブン

タイトルとURLをコピーしました