多忙化するケアマネ 高齢者の困りごとや治療への同意にも対応…本来業務は介護計画の作成

コラム

介護が必要な高齢者のケアプラン(介護計画)作りを担うケアマネジャー。
ただ、近年はそうした“司令塔”の役割だけでなく、ちょっとした用事を引き受けるなど、高齢者の生活上の困り事に対応するケースも増えている。多忙化するケアマネジャーの現場を訪ねた。(野島正徳)

要望断れない

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村尾さん(左)を訪ねた船越さん。行政手続きなど幅広い相談に応じる(兵庫県加古川市で)

 「どうすればええの?」「自分でパスワードを決めて入力するんよ」

 6月中旬、兵庫県加古川市の村尾明美さん(72)は、自宅を訪れた担当ケアマネジャーの船越綾子さん(51)に、市の「福祉タクシー利用券」を受け取るための、スマートフォンを使った申請方法を教わっていた。

 村尾さんは、車いす生活で役所の窓口に出かけるのは簡単ではない。スマホで手続きできることを知り、原則、月に1回、生活状況の確認や、ケアプラン見直しの必要性を検討するために訪れる船越さんに相談してみることにしたという。

 船越さんはこの日、医療費関連の手続きに必要な書類についても、市の担当窓口に電話で問い合わせ、後日、代わりに取りに行くことになった。
村尾さんは「近所に頼れる家族はいないので、いつも助かっている」と信頼を寄せる。

 ケアマネジャーの仕事の中心は、介護保険の利用者の希望や心身の状態を考慮してケアプランを作成することで、サービスを提供する事業者との連絡・調整などの役割も果たしている。

 ただ、「介護保険以外の手続きでも、ほかに頼る相手がいないことを見て見ぬふりはできず、困り事を相談されたら対応せざるを得ない」と船越さんは話す。

 利用者などからの頼まれ事にどこまで応じるのか、明確な線引きはない。ケアマネジャーが個別に判断しているのが実情だ。

 船越さんと同じ事業所で働く都倉和子さん(62)は今年3月、医師から連絡を受け、担当している一人暮らしの70代女性が緊急入院したことを知らされた。
女性に家族はなく、治療への同意を求められた。土曜日で仕事は休みだったが、「家事を途中で切り上げ、入院先へ急いだ」という。

 身寄りのない高齢者も多く、なるべく応じたいと思うが、「高齢化が進む中、役割が際限なく広がるのではないか」と不安も感じる。

 「日本介護支援専門員協会」が昨年、会員のケアマネジャーを対象に行ったアンケート調査では、
回答した1477人の約94%が「利用者から介護に関すること以外の相談を受けたことがある」とした。

 金融機関への付き添いや役所での介護保険以外の手続きなどを求められたことがある人は約84%、入退院時の手続きを支援したことがある人は約58%に上った。

 同協会は、多忙化でケアマネジャーの離職が増えたり、なり手不足が進んだりする事態にもつながりかねないとして、「個々の努力に依存しないシステムの構築が必要だ」と強調する。

 厚生労働省の担当者は「業務の範囲が明確でないために、ケアマネジャーの負担が大きくなっていることには問題意識を持っている」としながらも、「縛りすぎてしまうと、利用者への対応に支障が生じる懸念もある」と難しい側面があることを指摘する。

◆ケアマネジャー= 介護サービス利用者や家族から相談を受け、ケアプランを作成する専門職。30人以上の在宅高齢者を担当している人もいる。特別養護老人ホームなど介護施設に勤務する人も含め、実働は約18万7000人(2021年10月1日時点)。

様々な支え手が連携し、ケアマネジャーの「介護保険以外の仕事」の問題に取り組み始めた地域もある。

 静岡県島田市の山あいにある川根地区。市地域包括支援センターの同地区担当の主任ケアマネジャー、岩崎学さん(46)は昨年4月から、民生委員の会合に顔を出している。

 民生委員が把握する地域の高齢者の生活状況などの情報を生かし、自治会や近隣住民らと手分けして見守りを行うためだ。

 高齢者の家族と担当ケアマネジャーの話し合いの場も設けている。家族がすぐに来られる距離に住んでいないなどの事情にも配慮しつつ、行政の手続きや通院の付き添い、部屋の掃除などが必要な場合に連絡できる関係を築く。

 6月2日、記録的な大雨で、一人暮らしの男性(88)が利用する配食サービスが休止。地域の民生委員や家族と連絡を取り、今回は岩崎さんが食料を届けることになった。

 同地区では約4000人の住民のほぼ半数が65歳以上。高齢者だけで暮らす世帯も増えている。「地域の人たちとの『支え合いの土壌』を作り、ケアマネが抱え込まなくていい状況を増やしたい」と話す。

なし崩し拡大 限界くる…介護現場に詳しい早稲田大の野口晴子教授の話

 高齢者の暮らしと介護は密接に関わっていて、どこまでがケアマネジャーの役割なのか、線引きは難しい。コロナ禍でワクチン接種の予約を手伝うケースなどもあり、「何でも屋さん」として、様々な頼み事にも対応しているのが現状だ。

 ただ、善意に頼る形で、ケアマネジャーの業務をなし崩し的に拡大させていては、いずれ限界がくる。国は、業務の範囲を明確にした上で、現場での必要に応じて業務外の仕事をした場合に、手当を支給する仕組みも検討するべきだ。

 医師や看護師、保健師、民生委員といった専門家らも加えたチームとして、地域の介護を支える態勢を作る必要性も高まっている。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20230704-OYTET50004/
より転用しました。

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