沖縄には未だ昔の風習が根強く残されており、年中行事を執り行う際には旧暦に当てはめて進められることも少なくありません。
そのため全国的にも新暦に当てはめ行事をすすめるのとは違い、お正月やお盆の行事も一般的な時期と少しずれています。
沖縄でお墓を建てるのにいいとされるユンヂチもその一つです。
この記事ではユンヂチとはどういうもので、どんな風に考えられているのかを解説します。
お墓に深く関係するユンヂチとは?
ユンヂチは沖縄の島言葉で、閏月と書いてユンヂチと読みます。
一般的にはうるうづきと読み、太陽暦で4年に1度訪れる閏年とされています。
沖縄では旧暦に基づき行事を執り行う風習があり、ユンヂチはお墓と深く関係することがあります。
旧暦での数え方
旧暦の場合月の満ち欠けを基準にしていたため、1ヶ月が29.5日という中途半端な数え方をしていました。
しかし1年は365日となり、1ヶ月が29.5日だと354日しかないため11日足りません。
足りない分を調整するために33ヶ月おきに1度、1年を13ヶ月とすることで対応していました。
つまり、19年間で7回ユンヂチとして同じ月が2回カウントされます。
新暦での数え方
新暦では1ヶ月を30日または31日として数えるようになりますが、1年を365日として考えた場合、厳密には365日と端数が生じます。
この端数を4年に1度、2月の29日にすることで閏年として調整しているのです。
近年のユンヂチについて
昔は33ヶ月に1度やってくる、1年が13ヶ月になる年の1ヶ月間をユンヂチとしてとらえていました。
しかし近年になってからは、月単位ではなく13ヶ月になる年をユンヂチとして考えるように変わってきています。
つまり令和2年がユンヂチの年です。
ユンヂチの期間
沖縄でのユンヂチは、33ヶ月に1度という旧暦での数え方になります。
東京オリンピックが開催される令和2年がちょうどユンヂチにあたります。
新暦では令和2年1月25日~2月11日までがユンヂチの期間です。
旧暦では令和2年4月1日~4月29日までがユンヂチ期間ですが、新暦に当てはめると5月23日~6月20日となっています。
ユンヂチにお墓を建てる理由について
ユンヂチは沖縄の人にとって、お墓に関する行事に適した時期とされています。
なぜユンヂチにお墓を建てるのか?その理由について詳しくみていきましょう。
沖縄には古くから伝わる伝統が根強く残る
沖縄は旧暦に当てはめ年中行事を執り行うだけでなく、行事ごとのしきたりと各行事に細かい決まりがあります。
1つの表示を執り行うだけでもさまざまな決まりごとがあるので、準備から行事を終えるまでには多くの手間と時間をかけます。
沖縄の人々が先祖を大切にしていて、昔から続く風習やしきたりを守り継承するという強い意志があるからです。
妥協や手抜きをせずに各行事を執り行うには、それなりの労力も必要です。
お墓を建てたりお墓に関する行事を執り行ったりというのは、年中行事ではありませんがこれにも古くから伝わる風習やしきたりがあり、それに則り進められます。
しかし、何かと忙しい現代では、全てをしきたり通りに進めるのが難しいというシーンも多くなっています。
ユンヂチは見えない月と考えられている
ユンヂチは本来なかった月を作ったものであるため、神様がいるあの世からは見えない月と考えられています。
ユンヂチはあの世から見えない時期となるので、しきたりや風習にとらわれることなく自由に行動できる時期と言われてます。
つまり他の行事のように年中行事ではない、お墓を建てたりお墓に関する行事を執り行ったりする時期は、しきたりにとらわれることのないユンヂチが選ばれます。
日程も都合のいい日を選べるので、大切にしている年中行事に支障をきたすことなく執り行えるというメリットもあります。
リフォームや墓じまいにも最適とされている
お墓を建てても年月が経過すれば劣化や汚れが目立ってきます。
しきたりや風習を気にせず日程調整をしやすいユンヂチは、お墓のリフォームや墓じまいという行事にも最適な時期とされています。
近年では沖縄でも墓じまいをするケースが増えていることから、墓じまいもユンヂチに行われる傾向が見られます。
先祖を大切にする沖縄の人々にとって、お墓に関する行事も手を抜くことなく且つ日程調整もしやすいユンヂチは特別な年となるのです。
沖縄の人がユンヂチやお墓を大切にする理由
お墓を建てること、リフォームや墓じまいというのは、先祖代々から続けられてきた習慣です。
どれもユンヂチに行われることが多いのですが、先祖のために執り行う行事なのに、わざわざユンヂチを待って行われるのかについては理由があります。
沖縄では家族の誰かが罰当たりな行為をすると悪いことが起こり、その影響が家族だけにとどまらず親戚一同にも及ぶと考えられています。
しきたりや風習に従い執り行われますが、先祖に対して決して失礼なことをしているわけではないにしても、万が一のことを考えてあの世からは見えないユンヂチにお墓に関する行事を執り行なえば、先祖が知らずに済むので安心というのが理由です。
昔と今のお墓に対する考え方
昔の沖縄では、風葬で死者を弔うという習慣がありました。
風葬では人里離れた場所に一定期間安置して骨になるのを待ち、遺族は骨になってから再度その地を訪れ洗骨してから埋葬していたのです。
骨になるまでには時間がかかるため、魂も長くその地にとどまると信じられていました。
現在は火葬してから埋葬されていますが、未だに魂が残っていると考える人も少なくないためお墓をとても大切にしているのです。
ユンヂチにはお墓建て替えや引っ越し、墓じまいにもいい時期とされていますが、魂が残る場所からお墓を移動すると、先祖が迷うのでお墓は動かさない方がいいと考える人も少なくありません。
ユンヂチに行うお墓以外の行事
お墓を建てる以外にも古くなったお墓のリフォームや墓じまいは、ユンヂチに合わせてスケジュールを立てます。
それ以外にもユンヂチを待って行われる行事がいくつかあるので、お墓以外の行事をみていきましょう。
仏壇にもいい時期である
位牌は仏壇に飾るものですので、お墓を建てると仏壇も必要になります。
仏壇もお墓と同じように購入したり買い直したりする際には、開眼供養と閉眼供養が必要です。
ユンヂチは仏壇の購入や買い直しにもいい時期とされているので、ユンヂチの年には仏壇屋のCMが増えるというのも特徴的です。
位牌の継承「トートーメー」の筋正し(シジタダシ)もユンヂチに行われる
沖縄のしきたりでは、父方の血族が位牌を受け継ぐというしきたりがあります。
現在は家族が同じお墓に入るのが一般的ですが、昔の沖縄では父方の血族しかお墓に入ることを許されていませんでした。
そのため位牌を受け継ぐのも、父方の血族のみとされていました。
しきたりにも細かい取り決めがありますが、間違があった場合一族にトラブルが起きると考えられています。
その際には筋正しをすれば間違いを正せると考えられており、筋正しもユンヂチに行うのがよしとされているのです。
ユンヂチはお墓事の悩みを解消する時期にも最適
沖縄でも近年になり、墓じまいをする人が増えてきています。
墓じまいをするという決断は地域に限らず慎重な見極めが必要ですが、放置したままでは無縁仏になりかねません。
苦渋の決断ではありますが、墓じまいもユンヂチにスケジュールを合わせるケースが増えています。
沖縄のユンヂチとお墓の豆知識
沖縄の人々にとって特別な年となるユンヂチには、お墓にまつわる行事が増えます。
そのためテレビCMでもお墓に関するCMが増えるのが特徴です。
お墓に限らず、仏壇や霊園などをアピールするCMも増えます。
さらには街中のいたる所でも看板を建てたり、夜間のライトアップをしたりと宣伝には余念がありません。
本来であればユンヂチは1ヶ月間だけでしたが、現在は1年を通してユンヂチとされるようになっているため、お墓に関するCMや宣伝も年間を通して行われています。
まとめ
かつて琉球王国として栄えた沖縄には、未だ独特のしきたりや風習が数多く残されています。
ユンヂチが神様のいる世界からは見えない時期という説はあっても、実際の根拠については謎が多いのも特徴です。
専門家でも謎が多いとしており、文献なども確認はされていません。
独特のしきたりや風習ですが、ユンヂチはお墓に関する行事に最適という認識がありますので、今後も変わらず受け継がれていくことでしょう。